築島 渉 (つきしま わたる) 両親が映画好きなのと、有楽町界隈の育ちだったため、子供のころから映画は空気のようなもの。元来の専門は、アメリカ現代文学、思想。 批評理論や思想(特に現象学)から文学を読んでいたのを、手を伸ばし映画批評を書くにいた…

お知らせです

このサイトに今まで来てくださっていた方々へのお知らせですもしも私めの書きものに まだ興味をお持ちでしたらどうぞmixiのほうに来ていただけたらと思います。http://mixi.jp/show_friend.pl?id=22197177 こちらではニュースからのエッセイをかいております…

レディ・イン・ザ・ウォーター

私はシャマランに甘い。それは、彼が短編小説として映画を扱っているからだ。 「短編小説とは、暗闇でのキスのようなものだ。」−ホラーの帝王スティーブン・キングは、いくつものすばらしい短編を発表しているが、その彼の言葉である。暗闇でのキスはもちろ…

インサイド・マン

インサイドマンかのスパイク・リー監督のもと、「クローサー」での名演が印象深いクライブ・オーウェンを筆頭に、ジョディ・フォスター、デンゼル・ワシントンといった演技派が名前を連ね、話題となった作品である。 ニューヨーク。ある大手銀行の本店で銀行…

ヒストリー・オブ・バイオレンス

「ザ・フライ」で知られるカナダ人監督デビッド・クローネンバーグによる、グラッフィックノベル原作のクライム・ムービーである。 アメリカ、インディアナ州。平和な田舎町でダイナーを営み、家族と平和な暮らしを営むトム(ヴィゴ・モーティセン)。彼の店…

キングダム・オブ・ヘブン

キングダム・オブ・ヘブン―Showin’ You How to Rule the Land「グラディエイター」でオスカーを逃した、かのリドリー・スコット監督の超大作歴史作品である。 時は、12世紀。世界は、「異教は邪教」とばかりに聖地エルサレムをイスラム人から奪回し、「エル…

ライフ・アクアティック

アメリカ版「家族の肖像」 スティーブ・ズィスー(ビル・マーレー)は、名の知れた海洋冒険家だが、大の親友を未知の鮫の餌食として失った上、ドキュメンタリー映画も大コケ、落ち目すぎて新作を作ろうにも出資者も見つけられない状態である。その上妻(アン…

チャーリーとチョコレート工場

ロアルト・ダールの名作児童文学を、鬼才ティム・バートンが、友人ジョニー・デップとタッグをくんで映像化して見せた、あの話題作である。 激しく傾いたボロボロの家。チャーリー・バケット(フレディ・ハイモア)は失業中の父(ノア・テイラー)と母(ヘレ…

クローサー

クローサーもっと近く、もっと遠く新進劇作家パトリック・マーバーの人気戯曲を、本人が手直し、構成力では定評のあるマイク・ニコルズ監督が映画化したのがこの作品である。 めがねにボロボロのシャツ、さえない死亡記事担当の新聞記者ダン(ジュード・ロウ…

ネバーランド

ネバーランド 残されたステッキと山高帽イギリスの劇作家ジェームズ・バリーと、「ピーターパン」を書くきっかけとなった少年との出会いを描き、映画としては高い評価を得ながらも、「事実と違い、まことに遺憾である・・・」登場人物の遺族からこんなコメン…

スーパーサイズ・ミー

2001年のベネチア・ビエンナーレで、日本の現代芸術家中村政人が展示して見せたのは、薄暗い部屋の中に、幾重にも迷路のように連なる巨大な「M」のネオン・ロゴであった。そのまがまがしく黄色い光を放つ「M」たちは、われわれの良く知るあの「M」−世界共…

宇宙戦争

スピルバーグ的寓話 スピルバーグの大新作「宇宙戦争」である。徹底した秘密主義の末に公開されたその中身は・・・ ニュージャージーに暮らすレイ(トム・クルーズ)はごく平凡なアメリカ人。別れた妻との間には息子のロビー(ジャスティン・チャットウィン…

ヴィレッジ

「失敗から新たに学ぶ男、シャマラン」「シックスセンス」「サイン」のシャマラン監督の最新作がやっとビデオ化とあいなった。 森に囲まれた、静かな村。人々は農耕を営み、マキを割り、刺繍をし、パンを焼く。そんな平和な村には決して破ってはならない三つ…

ディープ・ブルー

人間が生態系の中心であるとか、全生物の進化の頂点であるとか、そう奢るようになって、どれだけになるのだろうか。ルネサンスは人間の美しさをひたすらにたたえ、科学は人間の知の粋としてもてはやされ、クローン羊のドリーは人間が神の領域に達した証明で…

コンスタンティン

キアヌ・リーブスが「マトリックス」的な格好よさを見せると鳴り物入りの映画、「コンスタンティン」である。 ジョン・コンスタンティンは、悪魔祓いを生業とする男。肺がんで余命いくばくもない彼は、悪魔との壮絶な戦いを生き延びてきたハードボイルドだが…

バッド・エデュケーション

(批評ですが、ストーリーをネタバレさせているわけではありません) ペドロ・アルモドバル監督の、最新作。「半自叙伝」と呼ばれるこの作品の主役は、映画監督エンリケと、その少年時代の親友イグナシオの二人。熱く悲しい愛の物語である。1980年、マドリッ…

オールドボーイ

「JSA」のパク・チャヌク監督が、かのカンヌ映画祭でグランプリも獲得した、紛れも無い傑作である。 オ・デスは妻と一人娘を持つ、遊び人ではあるが極めて平凡なサラリーマン。が、娘の誕生日プレゼントを持ち帰る雨の中、忽然と姿を消す。 彼が次に目覚…

マシニスト (批評・ネタバレ)

"Ghost in the Machinist"―死と再生のために 批評ですので、結末に関するネタバレが含まれます。ネタバレでないレビューは前日にあります ギルバート・ライルは、科学中心主義の、「肉体と精神は全く別のもの」という考え方に対し、侮蔑の意味も込めて、こう…

マシニスト (ネタバレ無し)

工場で働く機械工(マシニスト)のトレバー(クリスチャン・ベイル)。すでに365日、寝ていない。極度の不眠症で、骨と皮となった彼の心の癒しは娼婦のスティービー(ジェニファー・ジェイソン・リー)や、空港のコーヒーショップのウェイトレス、マリア(ア…

デビルマン

「デビルマン」 あな、もったいなや、もったいなや・・・。 「デビルマン」といわれれば、私はすぐさま実家の押入れから一枚の古いレコードを持ち出す。テレビ放映当時の主題歌のレコードを、私は30年後生大事にもっているのだ。当時まだ小学校に上がる前で…

レディ・キラーズ

「レディキラーズ」 オリジナルとの差に何かが見えるものの・・・ ミシシッピ川のほとりの一軒家に暮らすブラックのマンソン未亡人は、敬虔なクリスチャンの老婦人。そんな夫人の家に訪れたのは、上品な物腰の初老の白人男性(トム・ハンクス)。音楽仲間と…

半落ち

「半落ち」 問いかけとしてみる、日本映画 (ネタバレ無し)「半落ち」とは、容疑者が容疑を一部だけ自供し、完全には明かしていない状況をさす警察用語。 私、梶聡一郎は、3日前、妻の啓子を、自宅で首を絞めて、殺しました―自主出頭してきた梶警部(寺尾聡…

僕はラジオ

「僕はラジオ」 カーター時代に見る「アメリカの良心」1976年、アメリカ南部の田舎町。買い物用のカートにガラクタをつめこみ街を徘徊する黒人の青年(キューバ・グッディングJr.)と、そしてそれを遠巻きに見つつ、見えないふりをしている町の人々の姿が…

「誰も知らない」

「誰も知らない」 輝きの裏に隠されたもの「幻の光」の是枝裕和監督が、1988年に起きた巣鴨子供置き去り事件を題材に撮りカンヌでパルムドール・ノミネート、主役の柳楽優弥少年が独特の存在感で史上最年少のカンヌ主演男優賞を受賞した、かの話題作であ…

スウィングガールズ

「スウィングガールズ」 谷啓までおいしい青春コメディー「ウォーター・ボーイズ」の矢口史靖監督による、女子高校生ジャズバンド青春映画の登場である。東北の片田舎の高校。補習組のぐーたら落ちこぼれ女子たちは、野球部の応援ブラスバンド用の弁当を届け…

シャーク・テイル

「シャーク・テイル」 内輪受けのセレブ嗜好映画かの職人集団 ドリームワークスによるフルCGアニメ。豪華な声優たちのキャスティングで話題を呼んだ作品である。 海底に広がる大都会リーフシティ。ここに暮らすオスカー(ウィル・スミス)は「いつかでなく…

トスカーナの休日

「トスカーナの休日」 お気楽映画の醍醐味 ベストセラー小説、フランシス・メイズの『イタリア・トスカーナの休日』を、「写真家の女たち」のオードリー・ウェルズ監督で映画化したのが、この「トスカーナの休日」(Under the Tuscan Sun)である。 サンフラン…

ビヨンド the シー 〜夢見るように歌えば

「ビヨンド the シー」〜夢見るように歌えば〜 スペイシー監督の才能を感じさせるエンターテイメント作品 アカデミー俳優ケヴィン・スペイシーが、製作・監督・主演の3役を努め、一切の吹き替えなしに歌い踊ってみせる、1960年代の大スター、ボビー・ダーリ…

ゲロッパ!

「ゲロッパ!」 日本で作るハリウッド娯楽映画 数日後に収監されることになったヤクザの組長・羽原(西田敏行)には心残りなことが2つあった。1つは25年前に生き別れた娘かおり(常盤貴子)と再会を果たすこと。そしてもう1つは大ファンであるキング・オブ…