キューティーハニー

 「キューティーハニー」  劇団演技陣の素晴らしさと「ハニー不足」

 1973年にアニメ放送されカリスマ的人気で伝説となった、あの永井豪アニメを、「ハニメーション」と名づけられた、アニメ+子供実写番組の風味を残したVFXで実写して見せたのが、本作品である。

 タチバナ総合商事で働く如月ハニー佐藤江梨子)はオニギリ大好きの明るい女の子。だが実は父親の手によって再生された、キューティーハニーという名の特殊なサイボーグ・「愛の戦士」。そんなハニーの特殊な能力に目をつけた秘密結社パンサークローは、次々と刺客を差し向けてくる。
 冷静沈着がモットーの警察庁公安8課の秋夏子警部(市川実日子)や、なにか怪しい自称新聞記者の早見青児(村上淳)と友情を深めたハニーは、彼らを、そして人類を守るため、パンサークローに戦いを挑む・・・!


 「ハニメーション」は、そのキャラクター設定・演出の上手さとの相乗効果でこの映画の要である。たとえば、「少林サッカー」のVFXは、あの「ワイヤーアクション」がわかっているからこそ楽しめるし、「ヴァン・ヘルシング」や「ハルク」のVFX−つまりあの妙にリアルでないキャラクターたちである−はそれが「アメコミ由来」のものであるとわかっているからこそ、アメリカ人は興奮をする。(日本人は微妙かもしれないが)「ハニメーション」が作って見せたのは、日本アニメ+子供実写ヒーロー番組の、うさんくささと、毒々しさ、そしてそれが奇妙にマッチしたスタイリッシュさだ。海外で、一度も日本で目にした事が無いのに「あれ、これ日本アニメでしょ」とわかることがある。その日本くささを、VFXと合体させたのが、「ハニメーション」なのだ。「よくできてるぅ〜」「超リアル〜」というのではないから、好き嫌いは別れるかもしれないが、これが、アメリカで好まれる「アメコミのVFXバージョン」と同じように、「日本アニメ+子供実写ヒーロー番組のVFXバージョン」だと思ってみていただければ、その価値はわかっていただけるのではないかと思う。

 しかし、この映画の最大の魅力は、「ハニメーション」でも、ましてや佐藤江梨子演じるハニーでもない。映画を見た後に最も心に残るのは、悪役たちのその卓越した演技力である。

 パンサークロウを率いるシスター・ジル役の篠井英介と執事役の手塚とおるには、いくらスタンディングオベーションをしても足りない程だ。ほとんど動かず表情も無い役どころながら、独特の威圧感と気品を、眼だけで表現してみせる篠井。独白の台詞回しで思わず涙を誘うほどの手塚。劇団で活躍をしている二人を見ていると、ぽっと出の芸能人やタレントの演技というものが、どれほど浅薄で味気ないものであるのか、つくづく思い知らされる。
 また、役者としてよりも声優として知られている新谷真弓の独特のはじけぶりは「ハニメーション」に色を添えるし、片桐はいりはまさに子供番組から抜け出てきたかのようだ。不思議さが魅力の小日向しえ。そして、「CASSHERN」同様、こういったファンタジックな世界だと強烈な魅力を放つ及川光博。悪役のメンバーは、まさに史上最高である。主役を食ってしまう魅力的な悪役というのはなかなかいないのだが(たとえば「ブレードランナー」のルトガー・ハウアー、「ダイハード」のアラン・リックマン)、「キューティー・ハニー」は(ハニーのダメさ故でもあるのだが)このメンバーは、まさに、ハニーが足元にも及ばない悪役軍団であった。
 
また、よくこれだけ漫画っぽくできたな、と思わず感心してしまう市川実日子村上淳の両人も、適役というほか無い。

さて、最後にこの映画最大の欠点がある。それは、他でもないキューティー・ハニーその人・佐藤江梨子である。彼女はかわいいし、元気もある。スタイルは確かに、現在活躍中の芸能人では彼女以上の手足の長さと、ナイスバディはいないであろう。下着姿で走ったりと、とにかくがんばっているし、かわいらしい。

だが、

なぜ彼女をもっと美しく撮ってやらなかったか、と私はそれが本当に悔やまれるのだ。彼女の「体」はそれはそれは美しく撮ってある。長い足、きゅっとひきしまったヒップ、きれいな胸。ハニーの衣装があれだけ似合う人は、もういないかもしれない。

 けれど、「顔」は、私がいつもテレビで眼にするサトエリよりも、数段かわいくなく、写っているのだ。それはメイクのせいであり、カメラアングルのせいでもあろう。演技自体は、あんなものであろうし、しゃべり方自体は問題は無い。けれど、なぜもっと、彼女を「演出」してやらなかったのか。なぜもっと彼女を「ハニー」へと導いてやらなかったのか。とにかく、なぜもっと、彼女を体だけでなく、すべてを「美しく」作ってやらなかったのか。

他の部分が非常に良くできた作品だからこそ、「ハニー」本人の出来がとにかく悔やまれる、そんな映画であった。

え?これはサトエリ映画?だとしたらなおさら、サトエリをもっともっとかわいく写せるはずだと思います・・・。

映画として 7/10
実写アニメとして 9/10
サトエリ映画として (体目当て) 10/10 (全体像目当て) 5.5/10
悪役映画として 10/10