2004-01-01から1年間の記事一覧

昭和歌謡大全集

村上龍の同名小説の映画化である。 東京都・調布。専門学校生で、友人たち(松田龍平/池内博之/斉藤陽一郎/村田充)と昭和歌謡を舞台風に歌うことを趣味としている青年(安藤政信)が、町で通りがかりのおばさん(内田春菊)をからかった末、大声を出され…

女はみんな生きている

(ストーリーの一部にはふれていますが、ネタバレというほどではありません)「女はみんな生きている」 女はそこに何を見るのか普通の中年主婦エレーヌと、夫ポール。知人との約束に遅れると車を飛ばす彼らの前に、怪しげな男たちに追われた血まみれの若い有…

エイリアンVS.プレデター

「エイリアンVS.プレデター」 「第五惑星」でもよかったのに 2004年、巨大企業ウェイランド社に謎の熱源が南極大陸の地下深くで発生しているという衛星データが送られてくる。この企業の経営者で億万長者のチャールズ・ビショップ・ウェイランド(ランス・ヘ…

デボラ・ウィンガーを探して

「デボラ・ウィンガーを探して」 自己探索でハリウッド批判 TOTOという1980年代を風靡したアメリカのバンドがいる。彼らの代表曲は「ロザーナ」で、当時TOTOファンだった私は、それが、キーボードのメンバーの彼女の名前から取られた歌だと知っていた。ロサ…

「ドグマ」

「ドグマ」(1999年アメリカ映画) 聖書でやおい? 「やおい」とは、「ヤマなし、オチなし、イミなし」の、アニメや小説、映画など既存の作品を主に同性愛を中心にパロディ化したものと記憶している。映画「ドグマ」は、同性愛ではないにしろ、この、「や…

「ルナ・パパ」

「ルナ・パパ」 奇想天外・荒唐無稽・抱腹絶倒1999年のドイツ=オーストリア=日本合作の、東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞作品である。 舞台はタジキスタン、砂漠に囲まれた典型的な田舎町である。戦争で頭がおかしくなった兄(モーリッツ・ブライブト…

 「ジャッキー・ブラウン」

「ジャッキー・ブラウン」 クエンティン・タランティーノ1997年の作品である。 黒人スチュワーデスのジャッキー・ブラウン(パム・グリア)は、密売人の売上金をメキシコからアメリカに運ぶ副業を持っていた。だが、ひょんなことから逮捕され、捜査官レイ…

イン・ザ・カット

「イン・ザ・カット」 サスペンスにフェミニズムを (批評ですが、ネタバレはしていそうでしていません) In The Cut−ホームページによれば、語源は女性器であり、転じて、秘密の部分、安全な隠れ場所の意味であり、また、ギャンブラーが他人のカードを盗み…

「ポーラー・エクスプレス」

「ポーラー・エクスプレス」 動く絵本「ポーラー・エクスプレス」は絵本作家クリス・ヴァン・オールズバーグ原作(彼は映画「ジュマンジ」の原作者でもある)の「特急北極号」の映画化である。ハリー・ポッターが実写で(もちろんCG合成だが)できる時代で…

白いカラス

「白いカラス」 表現者からの控えめな意見原作は、アメリカの誇る文豪フィリップ・ロス原作で、フォークナー賞も受賞している[Human Stain] (映画の原題も同じである)である。 1998年、アメリカ・ニューイングランド。大学の学部長コールマン・シルク(ア…

「下妻物語」

「下妻物語」 たいへんよくできました 嶽本野ばら原作の不思議小説の映画化である。 レースのパラソルにボンネット、ロリータファッションに身を包むロココ命の少女、桃子(深田恭子)。彼女はコテコテのチンピラ家庭出身だが、「心はいつもお仏蘭西」とばか…

「恋愛適齢期」   

「恋愛適齢期」 一筋縄ではいかない恋の行方ダイアン・キートンにジャック・ニコルソン、脇役にキアヌ・リーブスという豪華メンバーで話題を呼んだ、「恋愛適齢期」(Something's gotta give)である。 ハリー(ニコルソン)はすっかり熟年の男性だが、いまだ…

「僕は怖くない」

「僕は怖くない」 映像と音楽で語る社会派叙事詩映画 ガブリエーレ・サルヴァトーレス監督(「エーゲ海の天使」1991でアカデミー外国語映画賞を受賞)の2003年監督イタリア作品である。原作は同名のニコロ・アンマニーティーの小説で、脚本も本人が担当した…

SAW 「ソウ」

SAW 「ソウ」 無痛社会の激痛映画 サンダンス映画祭で セブン meets CUBE として話題をさらい、オーストラリアの脚本・監督のマイナー作品でありながら、全米2000館公開の大ヒット作品となった作品である。SAWとは、のこぎりの意であり、動詞seeの過…

モンスター    

「モンスター」 アメリカの車輪に巻かれて (批評ですので、ネタバレが含まれます) かつて「無知の涙」という本があった。永山則夫という死刑囚(少年時代に4人を射殺)が、獄の中で独学、自らの人生を反芻し、その犯罪をするにいたった経緯、心理などを語…

「ドーン・オブ・ザ・デッド」     

「ドーン・オブ・ザ・デッド」 会話のきっかけに。 演技力では定評のある女優、サラ・ポーリーを主役に置き、ロメロの最高傑作をタイトルもそのままにリメイクしたのが、この、「ドーン・オブ・ザ・デッド」である。 看護婦アナ(ポーリー)は一日の仕事を終…

「スクール・オブ・ロック」  

「スクール・オブ・ロック」 子供には勝てません 「愛しのローズマリー」でパルトロウとの絶妙なコンビでほのぼのと笑わせてくれた、ジャック・ブラックの、映画公開当時も評判の高かった、コメディである。 ロックギタリストのデューイ(ジャック・ブラック…

「キル・ビル」vol.2           究極の筑前煮ムービー!

賛否両論だった前作「キル・ビル」が、「あの映画なんなん?」という人と、「最高!」という人にぱっくりと別れてしまったのは、記憶に新しいだろう。しかし、監督の意図まで考えてみると、なかなか褒めてあげたくなる作品である、と私は書いた。(もちろん…

「コラテラル」         

「コラテラル」 佳作『ドラマ』として見る 「ヒート」のマイケル・マン監督に、天下のトム・クルーズが悪役に挑む、と聞けばおのずと期待してしまう「サスペンス・アクション」ムービー、「コラテラル」。ところがどっこい、この映画、「サスペンスアクショ…

「モンスター」              アメリカの歯車に巻かれ

(批評ですので、ネタバレが含まれます) かつて「無知の涙」という本があった。永山則夫という死刑囚(少年時代に4人を射殺)が、獄の中で独学、自らの人生を反芻し、その犯罪をするにいたった経緯、心理などを語った作品である。そこに描かれるのは社会か…

「ステップフォード・ワイフ」 

「ステップフォード・ワイフ」 ヨーダの送る豪華「コメディ」「ステップフォードワイフ」は、ニコール・キッドマン、クリストファー・ウォーケン、マシュー・ブロドリック、ベッド・ミドラー、そしてグレン・クロース、と主役級をまさに豪華にそろえた新作映…

「トゥー・ウィーク・ノーティス」

「トゥー・ウィーク・ノーティス」 「デンジャラス・ビューティー」「恋は嵐のように」の脚本家、マーク・ローレンスが、ガサツの女王・サンドラ・ブロックと、ダメ男キング・ヒュー・グラントを主役にすえ、自分の脚本ではじめてメガホンを取った!のが本作…

カレンダー・ガールズ

実話にもとづいた、快作である。 イギリスののどかな片田舎。女性たちの感心ごとといえば、女性連合の集会や催し物だが、これがまた、思わず笑いたくなるほどのつまらなさ。 そんな時、ウィットに富み、また愛情深かったアニー(ジュリー・ウォルターズ)の…

マルコビッチの穴 

「操る⇔操られる 人間の思考の穴」 人間が主体的な生き物だと説明されれば、あなたは納得できるだろう。 人はモノローグな生き物だ。全てを自分に関連付けて考え、全てを自分のなかで解釈する。所詮会話の相手の言ったことも自分で解釈しているのだから、そ…

「嗤う伊右衛門」 (3) ズレと日本と

ルースベネディクトの「菊と刀」については、一度はどこかで聞いたことがあるかと思う。1944年に出版されたこの本を書いたのは一度も日本へきたことのないアメリカ人であるが、その洞察力はすばらしく、「日本の文化の型」を鋭く語った名著である。それでは…

「嗤う伊右衛門 」  (2) ズレと日本と

まずこの作品で最初に確認しておきたいのは、これが、広くしられた物語を再構築したものであることだ。 本来の四谷怪談は、伊右衛門が出世欲と(色?)欲に目がくらみ、妻のお岩を薬で毒殺、梅と結婚するが、彼女ともども岩に呪い殺されるという話である。 …

「アダプテーション」       創造すること

「アダプテーション」 創造の耐えられない重さ現実と虚構が交錯する映画といえば、最近では、先日紹介した「僕の妻はシャルロット・ゲーンスブール」などであろうか。あの作品では、シャルロット・ゲーンスブールだけが実在のご本人で、本人が本人を演じてい…

「座頭市」  「転倒」の物語−「庶民」バンザイ!

「座頭市」 「転倒」の物語−「庶民」バンザイ! 北野武の作品を貫くものがある。それはもちろん、常に死であるかもしれないが、(故淀川長治先生は、たけしが死と暴力を乗り越えたときにこそ最高傑作を作るだろうと語った)、「たけしくん、ハイ」「菊次郎と…

「ガタカ」 (2)

「ガタカ」 (2) アンドリュー・ニコルの光と影 さて、「ガタカ」より早くに執筆されていたのが公開は後となった「トルーマンショー」であるが、「ガタカ」と「トルーマンショー」の共通点は、その双方が「作られた封鎖社会」からの脱出を描いた物語であるこ…

「ガタカ」            (1) SFとしてドラマとして

「ガタカ」 (1) SFとしてドラマとして ずいぶん前の映画でありながら、語られる機会の多い作品である。かつて映画館で見たものの出来の悪いSFであるという印象があったため、もう一度見直してみようと思い立った。 今回の鑑賞の結果、これは、秀逸なアイ…