「トゥー・ウィーク・ノーティス」

「トゥー・ウィーク・ノーティス」 

 「デンジャラス・ビューティー」「恋は嵐のように」の脚本家、マーク・ローレンスが、ガサツの女王・サンドラ・ブロックと、ダメ男キング・ヒュー・グラントを主役にすえ、自分の脚本ではじめてメガホンを取った!のが本作品。初監督作品ながら、「キャラにはまれる」なかなか稀有なラブコメと仕上がった。
 ちなみに、「トゥー・ウィーク・ノーティス」とは、アメリカで、退職する際には二週間前にそれを公言せねばならない、という慣習のこと。


 お金儲けより社会のために!とハーバード卒の才媛ながら社会活動に燃える弁護士ルーシー(ブロック)はちょっとした取引から、不動産会社の次男にして雑誌の表紙もたびたび飾るほどの、ハンサムな軽薄男ジョージ(グラント)の下で働くことになる。
 優柔不断で流されやすい性格の彼に見込まれてしまった彼女は、離婚調停からネクタイ選びまで、いつのまにか生活全般の面倒をみるはめになるが、一日中仔細なことでジョージの呼び出しを受ける暮らしに辟易、2週間後に辞めると宣言!
 ところがこれが、それぞれの心に小さなさざなみを起こすこととなる・・


 決して「完璧な作品!!」ではないし、ストーリーにあらもあるのだが、さすが脚本家出身というだけあって、ローレンスはそれぞれのキャラクターの性格をしっかりと書き込み、それがこの映画最大の魅力となっている。

 正義感に燃え仕事も出来るが、融通の利かないルーシー
 育ちがよく何事に良くも悪くもファジーなジョージ

の二人は正反対だからこそ、まるで同性同士の名コンビという体を帯びてくる。が、実際は上司と部下であるから、ジョージからの呼び出しはルーシーには上司命令となるし(それを楽しんでいるようにも見受けられるのではあるが)、それが結局のところ彼女のストレスとなってくる。

 もちろんそんな中でルーシーは自分の恋心に気づき始めるのだが、彼女が今一歩踏み出せない理由は彼女の「芯」とジョージ本人があまりに反対だから。法科の教授と牧師の間に生まれ、「社会の福利」のために人生をささげるよう育てられてきた、という彼女の素地までも、その両親の極端なキャラクターまで交えてしっかり描くことができたのは、ローレンスならではの力量ではないだろうか。
 そしてガサツな女をやらせたら右に出るもののないブロックが、これまたいきいきと演じているのだ。おそらくローレンス自身、はじめからサンドラを想定して作った役なのだろう。

 ルーシーに対しジョージの人間性の書き込みは多少薄いのだが、メイキングを見るとジョージ本人が心のうちを語るシーンがずいぶん削られているようだから、それもいたしかたないのかもしれない。が、しかし、そこはヒュー・グラント本人の魅力が補っているから、やはりキャラクターとしては申し分がない。

 以前友人が「やおい」系で「グラディエーター」のマキシマスなどのキャラクターをつかって新たに物語を創作する、ということをやっていたが、実際にやる人がいるか否かは別として、「トゥー・ウィーク・ノーティス」のこの二人でも、いくらでもエピソードが浮かびそうだな、と感じさせられた。それほどこの二人のキャラは魅力的なのだ。

 さて、忘れずに付け加えておきたいのだが、この映画を見終わったら、即必ず未収録シーンを見ることをおすすめする。

 どうやらローレンス監督、たくさんのエピソードを撮り、そしてたくさん削ったようだ。ラストについても相当悩んだのかもしれない。が、DVDでみると、未収録シーンがちょうど映画のラストにつながって楽しめるので、是非是非見逃さないでほしい。

 エピソードの積み重ね方、ストーリーの重点の置き方、スタイリッシュさ、などいくつか課題はあるけれど、ローレンス監督、次回作におおいに期待しておりますぞ。

とにかくキャラがいい!
エピソードはすこしばらけ感はあるけど、かなり笑えるのでコメディとしてもいい線にいっている!
しかもタイトルバックでサンドラとヒューの子供時代の写真が堪能できて珍しい!

ということで、結論。

300円

でみてあげてください〜。

ああああ!かきわすれてた!ノラ・ジョーンズとドラルド・トランプがご本人出演しておられます。ついでにたぶん新庄もいたことを、つけくわえておきますです。