どつかれてアンダルシア

「どつかれてアンダルシア(仮)」 あるどつき漫才コンビの愛憎ブラックコメディー!

 警察に追われつつ、カーチェイスの中血まみれでテレビ局に到着する男が二人。彼らをかばうようにしてメイク室からスタジオに導くひげ面の男。そして、大物の貫禄充分にスタジオ入りする二人。観客は歓迎の渦。二人はスペインきっての人気コメディアン、太っちょニノと、二枚目ブルーノのコンビ。10年の歳月を経て、再結成したのだ。
  スタジオに到着する警察・拒むテレビ側。と、スタジオの中から思いもかけぬ音がした。
あれは、70年代の初めのこと、アンダルシアのさえないディスコがはじまりだった・・・


 最近のコメディーには、毒がないとお思いの方、おられるだろうか。そんな方にはまさにうってつけの一品、それがこの、「どつかれてアンダルシア(仮)」である。(仮 までなぜかタイトルです。)

 存在感たっぷりの大物二人による衝撃的な幕切れに始まり、彼らの足跡を淡々と追って行くのだが、この、彼らの妙ぶり、おとぼけぶり、が最初こそほほえましいものの、「どつき漫才」(スペインにもあるんですなぁ)が人気を博し始めると、そう、コンビにはつきものの、すれ違いがはじまるんですね。そして、一人の女性を取り合ったあたりから、人生においてのどつきあいも激化。

 いつもたたかれ役のニノが、口八丁手八丁の自己中ブルーノにフラストレーションをため始め、これがガス漏れ→爆発→反撃→激化→戦争 へと進展。この辺の激化ぶりは、なつかしや夫婦間戦争のコメディー「ローズ家の戦争」のマイケル・ダグラスキャスリーン・ターナーにもひけをとらないすさまじさ。

 また、ニノ&ブルーノ のコンビ結成、解散、再結成までの30年の間に、当時のコマーシャル(スペイン国民には最高に懐かしいでしょう!)や、テレビ番組、81年に起きたクーデター、バルセロナオリンピック、などのスペインの激動の歴史が、「フォレストガンプ」よろしくCGや実写と共につづられていく。スペインではタイタニック以上の興行収入をあげたというのも、しごく当然のこと。

 そして、この映画の核をなすのは、おそらくすべてのコンビやグループにおける普遍的命題、「テレビに出てないときは仲が悪いのよ」。ニノとブルーノもテレビではニコニコしているものの、その腹の中はお互いの嫌悪感で一杯(これが映像化されたりするのが、この作品の洒落たところ)。お互いへの嫌がらせをはじめたらなんともとまらず訴訟・警察沙汰にまで行ってしまう。そう、このへん、まるで「チェッカーズ」と同じ。どこの国でも、コンビ・グループとは難しいものなのですな。
 しかしこれがただに憎しみあいだけで終わらないのがこの作品のなんともいいところ。最後の一瞬まで、どうぞお見逃しなく!

 監督のレックス・デ・ラ・イグレシアは、エイリアン3のオファーを断ったことで知られる監督。コンビ結成のきっかけになるヤギ(?!)や、ニノの履いている30年間脱がない幸運の靴下、など妙なアイテムの使い方も卓越ながら、そのキッチュなセット(壁紙、家具から衣装まで)で時代を演出する巧みさ、どうやらただものではないようなので、今後要チェックの監督である。

 30年に及ぶお笑いどつきあいコンビの愛憎をブラックジョークたっぷりで、でもあったかく描いたこの映画、途中なかだるみがあるのをかわいそうだが差し引いて、

結論

300円以内で、レンタルしてあげてください。
今日はコメディーなきぶんだけど、なんか、いじわるしたい気分・・なときに。