エイリアンVS.プレデター

 「エイリアンVS.プレデター」  「第五惑星」でもよかったのに


 2004年、巨大企業ウェイランド社に謎の熱源が南極大陸の地下深くで発生しているという衛星データが送られてくる。この企業の経営者で億万長者のチャールズ・ビショップ・ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は現地調査を決断、さっそく若手女性登山家レックスを筆頭に、各分野の専門家を招集する。
 熱源にたどり着くためには厚い氷に穴を開けることからはじめねばならない−と、そんな矢先、まっすぐに氷をくりぬかれた穴を発見した彼らがそこを降りると、かつての古代文明の全ての要素を兼ね備えた、動く迷路でもある巨大ピラミッドが。しかしそこに現れたのは、なぞの生物(エイリアン)と、なぞの異星人(プレデター)であった・・・!



「ジェイソンVSフレディ」があるのだから、もちろん、「エイリアンVSプレデター」も、ありである。なんといってもプレデターの前作では、彼らの収集した狩りの獲物の中に、エイリアンの頭蓋骨があった。それなら・・と企画されたのが、本作品だ。

 さいころから出たこま、であるから、これは最高傑作!というわけにはいかないが、個人的な感慨はとりあえずおいておけば(これについては後で)アンダーソン監督(「バイオハザード」)は、「B級SFアクション」としては合格点の仕事をこなしているように思う。「エイリアン」はそのギガーによるあまりにも美しいデザインから(私は子供のときに映画館で見た「エイリアン」の衝撃を一生忘れはしない)、常に美意識の高い監督をその続編に選んできたが(3はこれがデビューであったデビッド・フィンチャーファイト・クラブ」、4はジャン・ピエール・ジュネアメリ」である)、なんといっても相手は、あの、B級異星人の王道、プレデターである。最高に美しいクリーチャーと、最高に昔の特撮の面影を残した異星人のヴァーサスB級SFとしては、この監督はまさに適役だったといえよう。

 内容的には、人間たちの見せ場があり、プレデターの見せ場があり、エイリアンの見せ場があり、ととにかくめまぐるしい。どれか一点に絞るというわけには趣旨的にいかないから、これは仕方がないことだろう。が、なんといってもエイリアンとプレデターの「関係」(これについては、見ていない方のために説明は敢えてしないが)から設定せねばならないから、めまぐるしさとあいまって、多少分かりづらいものとなっている。しかし、エイリアンとプレデターの迫力ある見せ場はしっかりあるし、楽しめはする。

 が、画面としてあまりにも暗すぎる。「ヴァン・ヘルシング」もそうであったように記憶しているが、夜の場面が多い映画というのは、登場人物たちの色がはっきりとしていないと非常に見づらい。ましてや今回はあの「半透明」なプレデターと、「ぬるツヤ」のエイリアンである。残念ながら、その派手な闘いの場面ほど、画面が分かりづらい、というのが一番の難点かもしれない。

 さて、最後に私的な感慨で言えば−やはり、エイリアンの扱いだ。「エイリアン」では、マザーは宇宙船を操縦してきたように見えたし、あのときのエイリアンは、獰猛で狡猾、その肉体までも完全な武器である上に知的という、史上最高のクリーチャーであった。

えりちゃん

それが、2,3と進む上で、なんというか、知能が低下していって、ただの「動物」になりさがっていたのだ。「エイリアンVSプレデター」も、まさにこの「知能の悲しい低下」を受け継いでいる。プレデターにはプレデターの、エイリアンにはエイリアンの知力を見せてほしかったのだが・・「動物の勘」だけで行動しているように見えるエイリアンはもう見たくない、というのがエイリアンファンの私としての感想である。

 ストーリーは途中から、「え?」という展開をみせる。「これは、もしかして「第五惑星」か・・?」そんなことを期待しながらラストを見守ったのだが・・。ハリウッドでも、異星人相手でも、人間とはなんと都合のいい生き物であることか。そんなことを考えさせてくれる、映画であった。


映画として 6/10
B級SFとして 8/10