「ラスベガスをやっつけろ!」 みんな、ギリアムに騙されてない??


原作は、ハンター・S・トンプソンの同名ドキュメンタリー。トンプソンは、ゴンゾ・ジャーナリズムの創始者であるが(石丸元章さんなんて、この流れなんでしょうね)、じゃぁどんなものなのかといえば、
"Thompson deplores a rambling rolling style of writing that sucks in the audience and makes the reader feel as if he or she is actually experiencing the action. "
などという説明文を発見。

 簡単に言えば、読者がテキストに次々とひきこまれてしまって、実際に書いてあることを体験しているように感じさせる手法。と、こんな風に書くには、もちろん書き手自体がその経験をたっぷりと味わい、それをそのまま、おもむくままに文章にしているから。これが、トンプソンの骨頂である。
(ももちき、原作は読んでおりません。「アメリカン・ドリームの終焉」は読んでますが。気分的にトンプソンはビートニクの流れを感じさせます。バロウズの「裸のランチ」と、基本は同じではないでしょうか?ポップカルチャーと純文学の違いなだけ?)

さて、これをギリアムが、映像化した。


1971年。ジャーナリストのラウル・デューク(ジョニー・デップ)と相棒のサモア人弁護士ドクター・ゴンゾ(ベニチオ・デル・トロ)は真っ赤なコンバーチブルにさまざまな薬物を積み、嬉々洋々とハイでらりらりな気分で砂漠の道をかっ飛ばしていた。途中で拾ったヒッチハイカー(トビー・マグワイヤ)の青年をビビラせながら、彼らが目指すのはラスベガス。オートバイとバギーレースの祭典“ミント400”の取材である。しかしそんな目的はもう薬物の中に埋もれてしまい、ベガスのあらゆるところで幻覚の見放題のやり放題、ホテルはめちゃくちゃ。
しかし妙に小心者で、幻覚の合間にふとベガスの薬物取締りの厳しさを恐れたりもする。でも、そんなの、一服すればへっちゃら!さて、幻覚がさめたとき、彼らはどうなっているのか?


この映画、通常やはりもちろん、ジョニーデップのトンプソンへのそっくりぶり、というところでよく語られているようである。なんといってもハゲのがに股親父をデップが演じるのだから、
その怪演ぶりはやはり、見もの。

そしてトンプソンの描いた70年代ヒッピームーブメントの終焉と、そのすさまじいドラッグの幻想世界について語って、この映画の話終わり・・なんてことになりそうなのだが、

みなさん、騙されてない?

モンティ・パイソン」シリーズを見たことがあるのなら、この映画は、一瞬にして一目瞭然。

ラスベガスをやっつけろ」は、ギリアムによる、「モンティ・パイソン」のアメリカ版焼き直しなのである。

モンティ・パイソン」でくりかえし好まれたモチーフといえば

フリークス・大量の血液・意味なく裸・ゲロ・砂埃にまみれた戦地・軍人・変にハイテンションな人々の群れ・意味なく立っている不思議な神様・水槽・魚類、爬虫類・妙な講義・法廷・・・

などなどであるが、そう、この全てが、「ラスベガスをやっつけろ」の中で、完全に描かれているのである。もちろん麻薬中毒者の幻想として、だ。

そもそもトンプソンを模した、と言われるジョニーデップ本人が、まるでモンティ・パイソンなのだ。
そのしゃべり方、半ズボンに妙にサファリルックなファッション、がにまた歩き、首のこきこきした動き・・・これはまるで、モンティパイソンの ペリン+アイドル(+クリーズ)ではないか!!

私は最初、この映画がモンティ・パイソンにそっくりなのを「気のせいではないか」と思った。なにせどうしても、そのメンバーであった人間がメガホンを握っているのだから、無意識に似てしまったのではないか、と。
ところがどっこい、ももちきは脳天直撃の神のお告げを受けることとなる。

ヤク中の歩き方は、ここラスベガスではよっぱらいの歩き方とみなされる・・・そんなナレーションで写される、妙にがくがくとした足つきで歩くデップとトロ。

うげ!!モンティーパイソン最高のギャグである「シリーウォーク」そのままではありませんか!!!

(シリーウォークは、こちらを参考にどうぞ、動画でないのが残念!)

そして幻想として次々とうつしだされる映像の数々。そう、そう、パイソンはこんなだったねぇ、こんなだったねぇ・・。デップの妙な動き方に、エピソードの移り変わりのテンポ・・もう本当に、モンティ・パイソン シリーズそっくりなのである。
時代としては70年代初めという設定なのだが、その衣装も、やはりなんだかパイソン風。キャメロン・ディアス演じる女性記者の衣装も、なんだかアメリカ風というよりイギリスっぽい。ギリアムが衣装からセットから全てに口を出す監督であるのは、「ロスト・イン・ラマンチャ」でも知られたところ。

ギリアム、「ハンター・S・トンプソンの世界観を映像化する」といいつつ、「アメリカに帰国した自分を映像化」していないだろうか?

ひたすらに暗・明るくぐるぐると廻るアメリカ・ラスベガスにひきずられ、「ここは怖いところだ」とトロにつぶやかせ、あくまでもイギリス(モンティパイソン)という「ヤク」に漬かっていたい気分の自分。一方で、無理やりに部屋の片隅や車につぶれたアメリカ国旗をかかげ、アメリカ人であることをひっそりと確認する自分。

私にはどうも、このモンティ・パイソンへのそっくり具合の裏に、そんなギリアムの姿を見てしまった気がするのである。
でも、ガンバレ、ギリアム!モンティ・パイソンファンがついてるぞ!

結論

途中からうちのダンナも、すげぇ〜ヤクってすげぇ〜といいながら、笑って見れていましたので、コメディーとしても、散漫ながら見れるかと思います。
ので、250円くらいで、時間と気分的に余裕のあるときに、どうぞ。テンパってるとき見ると、腹立ちますけどね。

で、モンティ・パイソン ファンの人には、500円で。

やーアメリカンモンティ・パイソン、デップ、わかってやってるんでしょうか?
ギリアムの、「そこはもうちょっとこうしたほうが・・・」なんて指示で、完璧にパイソン化してるんですが、
ま〜さかデップ本人が、「ぼくはハンター・S・トンプソンを演じているんだ」と信じ込んでませんよね?
ま〜さか・・

みんな、だまされてないよね?