2004-01-01から1年間の記事一覧

「マレーナ」  イタリア版「フォレスト・ガン

「マレーナ」 イタリア版「フォレスト・ガンプ」として 「マレーナ」は一世を風靡した近年のヨーロッパ映画の作品のひとつだ。いろいろな雑誌でも、テレビでも、話題作として大々的に宣伝され、とりあげられた。主人公を演じるのは「イタリアの宝石」モニカ…

「ヘブン」

「ヘブン」 わたしが、あなたと、天に昇るまで。 名匠クシシュトフ・キェシロフスキは、「殺人に関する短いフィルム」で注目されたが、「トリコロール」の三連作が日本では特によく知られているだろうか。トリコロールの青・白・赤のそれぞれの意味、平等、…

「過去のない男」

「過去のない男」 静かで穏やかな生きなおしの日々 列車から降り立つ一人の男。ベンチに力なく座る彼の背後から、がらの悪い若者たちが容赦なく彼を叩きのめした。 しばらくして歩き出した男は駅のトイレで倒れこみ、病院で死亡の宣告を受けるーーが彼は蘇生…

「ラスベガスをやっつけろ!」 みんな、ギリアムに騙されてない??

原作は、ハンター・S・トンプソンの同名ドキュメンタリー。トンプソンは、ゴンゾ・ジャーナリズムの創始者であるが(石丸元章さんなんて、この流れなんでしょうね)、じゃぁどんなものなのかといえば、 "Thompson deplores a rambling rolling style of wri…

「セクレタリー」  変態だって幸せになれるのね☆

かっこよすぎる、ジェームズ・スペイダー!!じゃないや、サンダンス映画祭で特別審査員賞を受賞した、ももちき一押しの純愛変態ラブロマンスである。 (※ももちきは変態ではありません、念のため) リー(ジェイク・ギレンホールのお姉ちゃん)は、自傷行為…

華氏9/11 (3)

『華氏9/11」 批判と声と映像と (3) 昨日、おとといと、「華氏9・11」の内容における、すさまじいまでのブッシュ批判・アメリカ政府、メディアがけして拾わない声、という二点について語ってきた。 しかし、こう書くと、まるで普通のNHKドキュメン…

華氏9/11 (2)

昨日たくさんのかたからコメントをいただいたが、やはりムーア本人は、日本人にはあまり好印象を抱かれていないことがはっきりしたように思う。やはりあの、あまりに激情的で直球勝負なブッシュ批判が、日本人には濃すぎて受け付けられないのであろう。 映画…

華氏9/11(1)

華氏9/11 批判と声と映像と (1) はじめに言っておこう。私はマイケル・ムーア本人は好きではない。メディアに現れるその姿は、「アメリカ的な、あまりにアメリカ的な」、エキサイトしやすく、あまりにストレートに己の主張を語り、お世辞にも知的とも素敵…

「ラスト・サムライ」

「ラスト・サムライ」 日本映画版「カイロの紫の薔薇 「カイロの紫の薔薇」という映画を知っているだろうか。ウディ・アレン監督作品であるが、こんな内容だ。夫とうまくいっていない中年の映画大好き主婦が、映画の中に入ってしまう。(というより、映画の…

「ドッグヴィル」 (2) 「

(批評のためにネタバレしています)ドッグヴィルには、さまざまな人間が住んでいる。 自説を証明したいとやっきになっている自称思想家のトムや、リンゴ農園をやっている元都会人の男とその妻の子沢山一家、村で唯一の黒人とその肢体不自由な娘、家を持たな…

「ドッグヴィル」   人間とはいかに汚ら

ここ数年私が目にした中で、最もよく練り上げられた「小説」、それがこの、ラースフォントリアー(ダンサーインザダーク)監督・脚本の「ドッグヴィル」である。 チョークで引いた線のみでできた、簡単な地図のような、道や家の見取り図(時にドアや窓くらい…

「パンチドランク・ラブ」

「パンチドランク・ラブ」 評論家受けする、不思議・佳作 「パンチドランク・ラブ」とはどかんと一発食らわされたような、そんな一目ぼれのこと。 トイレ周辺小物の製造会社をやっているバリー・イーガン(アダム・サンドラー)の関心事は、バーコードひとつ…

「ニル・バイ・マウス」  G.オールドマンの光と

「ニル・バイ・マウス」 G.オールドマンの光と影 異常者役と犯罪者役をやらせたら右に出るものがいないといわれる性格役者、ゲイリー・オールドマン。 私は彼のデビュー当時の映画から見ているので(プリックアップ)20年近く、かなり長いお付き合いである…

「パッション」宗教的背景(ユダヤ)

−これから見る人へ・もう見たけど痛い事しかわからなかった人へ さて、今日は「パッション」鑑賞の手引きである。 宗教的・歴史的なバックグラウンドについて話すことになるので、そのつもりでお読みください。でも、簡略に、世俗的に、そして口語体ですから…

「キル・ビル」        

キル・ビル ニッポン大衆文化で、殺っちまいな! この映画を見るにあたって、心に留めてほしいことが二つある。ひとつ 日本が日本らしくないとか、ウマサーマンの日本語が下手だとか、ルーシーリューは着物が似合わないとか、そんな野暮は言いっこ無し。 ふ…

「パッション」 宗教的背景2

さて、今日は先日の、「ユダヤ人どうしてあんなに怒るのー?」に続く 素朴な疑問「キリストさんなんであんなに耐えるのー?」 である。 もちろん宗教的バックグラウンドをご存知の方や、セリフを注意深く読んでご覧になった方はもうわかっていることと思いま…

「パッション」 宗教的背景 1

「パッション」宗教的背景(ユダヤ)−これから見る人へ・もう見たけど痛い事しかわからなかった人へ さて、今日は「パッション」鑑賞の手引きである。 宗教的・歴史的なバックグラウンドについて話すことになるので、そのつもりでお読みください。でも、簡略…

「パッション」

かのメルギブソン監督の話題作、「パッション」である。 「パッション」の英語での意味は、キリストの受難である。 信徒たちと共にローマへと入ったキリストは、ユダヤ人司祭たちの反感を受け、信徒ユダによって彼らに売り渡される。法の遂行権のないユダヤ…

「トークトゥーハー」(2)モノローグとダイアローグ

「トークトゥーハー」(2)モノローグとダイアローグ さて、「トークトゥーハー」、私はこれを、男女の対話の物語として読んでみたいと思う。※この先ネタバレとなります。御気をつけください。 私がとても印象に残ったのは、昏睡状態の二人の女性、リディア…

「トークトゥーハー」 (1) 「対話」の物語

「トークトゥーハー」 (1) 「対話」の物語 「アタメ」「ハイヒール」のアルモドバルが、あの過剰な濃さを抜きにして作った、ぱっと見(いやじっと見も?)アルモドバル風ではない物語である。アカデミーの脚本賞を取った、間違いない秀作である。ストーリ…

「ゾルタン☆星人」

「ゾルタン☆星人」 バカ、お好きですか?ビバ・アホアホ!! 2000年のアメリカ映画、原題「Dude, Where's My Car?」 突然だが、私はここで白状したい。 実は、私はジムキャリーが不得意だ。 演技はうまいし、ハンサムだし、おもしろいし、言うこと無い。 で…

「テルマ&ルイーズ」 

「テルマ&ルイーズ」 ラディカル・フェミニズムの歴史絵巻としておそらくこれほど簡単に「語られ」ている映画も無いのではないだろうか。 仕事と浮気が生きがいの口汚い夫の下でこそこそとした生活を送るテルマ(ジーナ・デイビス)と、独身ウェイトレスで…

「WAR REQUIEM」

「WAR REQUIEM」 悲愴に美しいジャーマンによる戦争批判叙事詩 デレクジャーマンは1994年にHIVでこの世を去った。その前に住んでいたのが、イギリスのダンジェネスという、ドーバー海峡に面した小さなな村で通りがかりに買った、小さなコテージである。こ…

「マルホランドドライブ」  メタ・ムービーとして

ハリウッド。マルホランドドライブ(という場所)で起こった衝突事故から生き延びた一人のブルネット美女。彼女がふらふらとたどりついた先には、休暇中のおばの家を預かっていた、ベティ(ナオミ・ワッツ)というブロンドの女性がいた。やがて自分の記憶が…

「めぐりあう時間たち」考

この映画は別々の時代を生きる三人の女性が主人公である。20世紀初頭を生きたバージニアウルフ(特殊メイクでの熱演・ニコールキッドマン)、50年代の主婦ローラ(ジュリアンムーア)、現代の女性編集者クラリッサ(メリルストリープ)。彼女たちはそれぞれ…

「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」

「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」 曖昧であることのいじましさ あなたは今見ている目の前の光景が、本当にそのとおりであるのか、確信できるだろうか。 あなたが今見ているその世界は、左右二つの目から入った平面画像を、脳が計算して奥行きを付け加…

シカゴ

「シカゴ」 男たちにぶっぱなせ! 1920年代、アメリカ・シカゴ。ショービジネスに憧れる金髪主婦のロキシー(レニー・ゼルウィガー)は、その方面に口をきいてくれるから、と体を任せていた男が、ただのでまかせでを言っていたと知り、逆上。彼を射殺し…

「ボーイズ・ドント・クライ」  哀しい「青年」の物語

「ボーイズ・ドント・クライ」 哀しい「青年」の物語 それは、1993年の出来事だった。アメリカ・ネブラスカ州フォールズ・シティ。中西部の閑散とした田舎町で、後に全米に報道されることになる、衝撃的な事件が起こった。町外れの農家で発見された二人の女…

どつかれてアンダルシア

「どつかれてアンダルシア(仮)」 あるどつき漫才コンビの愛憎ブラックコメディー! 警察に追われつつ、カーチェイスの中血まみれでテレビ局に到着する男が二人。彼らをかばうようにしてメイク室からスタジオに導くひげ面の男。そして、大物の貫禄充分にス…

「僕の妻はシャルロット・ゲーンスブール」 かわいくて笑えるフレン

イヴァンはパリのスポーツ記者。ひたすら男の世界にいた彼が恋に落ち、結婚した。相手は女優シャルロット・ゲーンスブール。彼女は有名な女優だから、お店だって顔パスだし、スピード違反だって見逃してもらえるし・・・だけれど、ゆっくり落ち着いて食事も…